昨今の診療報酬改定や競争激化に伴い、「保険診療メインの経営から、自費診療を拡大したい」と考える院長先生が増えています。しかし、安易に自費メニューを導入しても、期待したほど売上が上がらない、あるいは既存の保険患者様から不満が出てしまうといったトラブルも少なくありません。
保険診療と自費診療の「併用型」には、特有の「落とし穴」が存在します。本記事では、自費移行に成功したクリニックの共通点と、失敗を避けるための戦略的なアプローチを解説します。

1.「保険診療のついで」では失敗する? 併用型クリニックが陥る3つの落とし穴
自費診療を導入しても、思うように成果が出ないクリニックには共通の原因があります。
① ターゲット層のミスマッチ
保険診療を求めて来院する患者様と、高額な自費診療を求める患者様では、クリニックに対する期待値が根本から異なります。保険診療の「待ち時間が長く、短時間の診察」というスタイルの中に、高単価な自費メニューをそのまま持ち込んでも、顧客満足度は高まりません。
② カウンセリングスキルの不足
保険診療は「病気を治す」ことが目的ですが、自費診療は「より美しく、より健康に」という欲求を満たすものです。医師やスタッフに、患者様の潜在的な悩みを引き出し、納得感を持っていただくための「カウンセリング力」が欠けていると、成約には至りません。
③ 院内導線と空間設計の混在
保険の一般患者様で溢れかえっている待合室で、高額な美容施術を案内されても、患者様はリラックスできません。自費診療に力を入れるなら、プライバシーに配慮した空間作りや、特別感の演出が不可欠です。

2. 自費診療への移行を成功させる「3つのステップ」
移行をスムーズに進め、売上を安定させるためには、以下のステップを踏むことが重要です。
ステップ1:自費診療のコンセプトを明確化する
「何でもできるクリニック」ではなく、「〇〇の悩みならこのクリニック」という強みを明確にします。自費診療に移行する理由と、それによって患者様に提供できる価値を再定義することから始まります。
ステップ2:スタッフの意識改革と役割分担
「高いものを売る」という心理的ハードルを払拭する必要があります。スタッフ全員が自費メニューの価値を正しく理解し、医師だけでなくカウンセラーや看護師がそれぞれの役割で患者様をサポートできる体制を整えます。
ステップ3:自費専用のオペレーション構築
予約システム、カウンセリングの時間確保、アフターフォローの流れなど、保険診療とは切り離した「自費専用のオペレーション」を構築します。これにより、現場の混乱を防ぎ、高いサービス品質を維持できます。

3. 【実例解説】併用型の壁を越え、自費比率を40%まで引き上げた事例
ある一般皮膚科クリニックでは、保険患者が多く忙しい一方で利益率が低いことに悩んでいました。そこで、「特定の曜日を自費優先にする」という大胆なシフトと、「初診時の徹底した肌診断」を導入しました。
単に院内にチラシを貼るのではなく、肌診断機の結果を元に医学的根拠を持って自費メニューを提案したことで、患者様の信頼を獲得。保険のついでに自費を受ける「リピーター」が急増し、1年後には自費比率が40%を超え、残業時間の削減と増収を同時に実現しました。

保険診療と自費診療の併用は、経営の安定性を高める大きなメリットがありますが、それぞれの「性質の違い」を理解した戦略が不可欠です。
「保険の延長」ではなく、自費診療をひとつの「事業」として捉え直し、組織とオペレーションを再設計すること。それが、移行を成功させるための最短ルートとなります。
東通インテグレートでは、「保険診療からの自費シフト・ハイブリッド経営」のコンサルティング等のご相談も頂きます。「自費を始めたいが、既存の患者様が離れないか不安」「スタッフのカウンセリング力を高めたい」といったお悩みに対し、貴院の現状に基づいた最適な移行プランをご提案します。



























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